Genius 1 Read On! 8 単語の意味&本文和訳 保存倉庫
Read On! 8
The Burden of Thirst
水を背負う人は人生の重荷も背負っています
長い道のりを水くみする何百万人もの女性が家の出入り口のそばに蛇口を持っていれば、社会全体が劇的に変わることでしょう。
Part 1
アイリト・ビネイヨの足は山道を知っています。朝の4時だというのに、ビネイヨは星明かりだけを頼りに、川まで岩だらけの斜面をかけ下り、重さ20kg以上の水を背負い、村まで急勾配の山を上って戻ってくることができます。生まれてからほぼ25年間、毎日3回、この水くみを繰り返してきています。エチオピア南西部にある、ビネイヨが暮らすフォロ村の他の女性もみんな、同じようにこの水くみの仕事をずっとしてきています。ビネイヨは8歳のとき、学校をやめました。お母さんがトイロ川から水をくんでくるのを手伝わなければいけなかったことが理由の1つです。川の水は汚れていて、飲むのには安全ではないけれど、フォロ村にあるたった1つの水なのです。
ビネイヨは(水くみの)他にも、夫が畑で作物を育てるのを手伝い、食事を作り、家をきれいにし、幼い3人の息子たちの世話もしなければいけません。こうした仕事のうちどれも、毎日、水くみに費やす8時間かそこらほど大切で、つらいものはありません(→でも、こうした仕事の中でも、毎日8時間位かかる水くみの仕事が一番大切で、何よりつらいものです)。
Part 2
豊かな国では、蛇口をひねると、きれいな水が出てきます。でも、世界中で9億人近くの人が、きれいな水を手に入れられませんし、人の排泄物を処分する安全な方法がない人が25億人もいます。汚れた水のせいと、トイレがなく、一人ひとりが清潔ではないために、毎年、世界中で330万人が死んでいます。その大半が5歳以下の子供なのです。ここエチオピア南西部では、過去数年にわたる雨不足のために、汚れた水さえ見つけにくくなっています。
きれいな水が乏しいところでは、水くみはほとんどいつも女性の仕事です。エチオピアのこの地域では、男性が水くみの仕事をするのは、女性が出産した後の数週間だけです。とても小さな男の子たちも水くみをしますが、7・8歳になるまでだけです。「男の子が大きくな(っても水くみをしてい)ると、あの(家の)女は怠け者だとみんなが言うのよ」と、ビネイヨは言います。ここで暮らす女性の評判は熱心に働くかどうかにかかっている、とビネイヨは言います。「もし家にいて、座ってるだけで何にもしないと、誰も私のことを好きになってくれないわ。でも、水を手に入れるために(山を)上ったり下りたりすれば、みんな私のことを賢い女だ、熱心に働いていると言ってくれるのよ」
Part 3
ある暑い日の午後遅く、大きな空のカン(=ポリタンク)を持って、私はビネイヨと一緒に川へ水くみに行きました。小道は急勾配で、ところどころぬかるんでいて、歩くのが難しいものでした。50分後に川に着きました。1年のうちこの時期には「川」は黒い泥の水たまりが続いているだけです。ロバや牛のウンチが両側の土手や岩場の至る所にあります。川にはもう40人ほどの人がいました。そのため、ビネイヨは上流の方が待ち時間が短いかもしれないと判断しました。待ち時間は朝の早い時間帯には特に長いものですから、息子のクマチョに弟たちの世話を任せて、ビネイヨは明るくなる前に、(その日の)第1回目の水くみに出かけるのが普通です。
私たちはもう10分上流に歩いて、30分待った後でビネイヨの順番になりました。1つ目のポリタンクと黄色いプラスチックのひしゃくを持って行きました。ビネイヨが水の中にひしゃくを入れたちょうどそのときに、ロバが水たまりに脚を1本入れ、ひしゃくの水を飲んだのです。ビネイヨは腹立たしく思いましたが、もうこれ以上待っていることはできませんでした。
Part 4
川に着いて1時間後、ビネイヨは2つのポリタンクに水を入れました。1つは自分の背中に乗せて運ぶもので、もう1つはビネイヨの代わりに私が運ぶのです。滑らかな革のひもを私のポリタンクの周りに結びつけて、タンクを背中に乗せてくれました。ビネイヨ自身はきめの粗いロープを使いました。ポリタンクは一番上まで水が入っていましたから、歩くと、20kg以上のタンクが背中の上で弾むのでした。苦労しながら、半分のところまでやって来ましたが、帰りの小道が一番の急勾配にさしかかると、私はもうこれ以上は先へ進めなくなりました。ばつの悪い思いをしながら、8歳くらいに見える、私のタンクの半分くらいの大きさのタンクを運んでいた女の子とタンクを交換してもらいました。この子は重くなったタンクを頑張って運びましたが、山の頂まであと10分位のところで女の子には耐えきれなくなりました。ビネイヨは女の子から重いタンクを取って、自分の背負っているタンクの上に積み重ねました。ビネイヨは今では45kg近くもの水を背負って、山を上り続けました。
「(村の人間は)みんな生まれたときから、きつい暮らしを送ることになるのは知っているのよ」と、自分の家の外に腰を下ろして、息子のクマチョを抱きかかえながら、ビネイヨは言いました。クマチョはパンツをはいていませんでした。「(生活がきついのは)私たちが生まれるずっと前から続いている、エチオピアのこの地域の習わしよ」 彼女はこの暮らしに疑問を抱いたことも、何か違ったものを期待したことも一度もありません。
Part 5
長い道のり水を運ぶことに何時間もかけていると、水の一滴一滴の価値がわかってきます。平均的な米国人は毎日、家だけで380Lの水を使っています。アイリト・ビネイヨは10Lで間に合わせています。この貴重な水を山の上まで運んでいるときに、みんなに、洗うために水を使うように説得するのはとてつもなく難しいものです。しかし、衛生設備と衛生管理は大切です。適切な手洗いをするだけで、かなり病気を減らすことができます。ビネイヨは「ひょっとすると1日に1回位」水で手を洗うと言います。「飲み水さえ十分ではないのに、一体どうやって服なんか洗えるのよ?」と、言うのです。ビネイヨが自分の体を洗うことはめったにありません。
例えば、井戸を掘ったりすることで、みんなの家の近くにきれいな水をもたらすことが、悲惨な(悪)循環を断ち切るカギです。きれいな水が豊富に使えるようになっている村は大きく様変わりします。以前は水くみに使っていた時間が、よりたくさんの食べ物を育てることや、より多くの動物を育てることや、商売を始めることにさえ使うことができるのです。家庭では、汚れた水をもう飲まなくなり、そのおかげで、(以前より)病気にかかっている時間が減ったり、病気になった家族の看病に時間がかからなくなります。一番大切なのは、水の奴隷状態からの解放です。この自由のおかげで、女の子たちが学校へ通えるようになり、より良い人生を選べるようになることを意味しています。家族のために水くみをする必要があったり、あるいは、お母さんが出かけている間に弟たち・妹たちの世話をする必要があることが、エチオピアのこの地域の女性のほとんどが学校に通っていない主な理由なのです。
The Burden of Thirst
水を背負う人は人生の重荷も背負っています
長い道のりを水くみする何百万人もの女性が家の出入り口のそばに蛇口を持っていれば、社会全体が劇的に変わることでしょう。
Part 1
アイリト・ビネイヨの足は山道を知っています。朝の4時だというのに、ビネイヨは星明かりだけを頼りに、川まで岩だらけの斜面をかけ下り、重さ20kg以上の水を背負い、村まで急勾配の山を上って戻ってくることができます。生まれてからほぼ25年間、毎日3回、この水くみを繰り返してきています。エチオピア南西部にある、ビネイヨが暮らすフォロ村の他の女性もみんな、同じようにこの水くみの仕事をずっとしてきています。ビネイヨは8歳のとき、学校をやめました。お母さんがトイロ川から水をくんでくるのを手伝わなければいけなかったことが理由の1つです。川の水は汚れていて、飲むのには安全ではないけれど、フォロ村にあるたった1つの水なのです。
ビネイヨは(水くみの)他にも、夫が畑で作物を育てるのを手伝い、食事を作り、家をきれいにし、幼い3人の息子たちの世話もしなければいけません。こうした仕事のうちどれも、毎日、水くみに費やす8時間かそこらほど大切で、つらいものはありません(→でも、こうした仕事の中でも、毎日8時間位かかる水くみの仕事が一番大切で、何よりつらいものです)。
Part 2
豊かな国では、蛇口をひねると、きれいな水が出てきます。でも、世界中で9億人近くの人が、きれいな水を手に入れられませんし、人の排泄物を処分する安全な方法がない人が25億人もいます。汚れた水のせいと、トイレがなく、一人ひとりが清潔ではないために、毎年、世界中で330万人が死んでいます。その大半が5歳以下の子供なのです。ここエチオピア南西部では、過去数年にわたる雨不足のために、汚れた水さえ見つけにくくなっています。
きれいな水が乏しいところでは、水くみはほとんどいつも女性の仕事です。エチオピアのこの地域では、男性が水くみの仕事をするのは、女性が出産した後の数週間だけです。とても小さな男の子たちも水くみをしますが、7・8歳になるまでだけです。「男の子が大きくな(っても水くみをしてい)ると、あの(家の)女は怠け者だとみんなが言うのよ」と、ビネイヨは言います。ここで暮らす女性の評判は熱心に働くかどうかにかかっている、とビネイヨは言います。「もし家にいて、座ってるだけで何にもしないと、誰も私のことを好きになってくれないわ。でも、水を手に入れるために(山を)上ったり下りたりすれば、みんな私のことを賢い女だ、熱心に働いていると言ってくれるのよ」
Part 3
ある暑い日の午後遅く、大きな空のカン(=ポリタンク)を持って、私はビネイヨと一緒に川へ水くみに行きました。小道は急勾配で、ところどころぬかるんでいて、歩くのが難しいものでした。50分後に川に着きました。1年のうちこの時期には「川」は黒い泥の水たまりが続いているだけです。ロバや牛のウンチが両側の土手や岩場の至る所にあります。川にはもう40人ほどの人がいました。そのため、ビネイヨは上流の方が待ち時間が短いかもしれないと判断しました。待ち時間は朝の早い時間帯には特に長いものですから、息子のクマチョに弟たちの世話を任せて、ビネイヨは明るくなる前に、(その日の)第1回目の水くみに出かけるのが普通です。
私たちはもう10分上流に歩いて、30分待った後でビネイヨの順番になりました。1つ目のポリタンクと黄色いプラスチックのひしゃくを持って行きました。ビネイヨが水の中にひしゃくを入れたちょうどそのときに、ロバが水たまりに脚を1本入れ、ひしゃくの水を飲んだのです。ビネイヨは腹立たしく思いましたが、もうこれ以上待っていることはできませんでした。
Part 4
川に着いて1時間後、ビネイヨは2つのポリタンクに水を入れました。1つは自分の背中に乗せて運ぶもので、もう1つはビネイヨの代わりに私が運ぶのです。滑らかな革のひもを私のポリタンクの周りに結びつけて、タンクを背中に乗せてくれました。ビネイヨ自身はきめの粗いロープを使いました。ポリタンクは一番上まで水が入っていましたから、歩くと、20kg以上のタンクが背中の上で弾むのでした。苦労しながら、半分のところまでやって来ましたが、帰りの小道が一番の急勾配にさしかかると、私はもうこれ以上は先へ進めなくなりました。ばつの悪い思いをしながら、8歳くらいに見える、私のタンクの半分くらいの大きさのタンクを運んでいた女の子とタンクを交換してもらいました。この子は重くなったタンクを頑張って運びましたが、山の頂まであと10分位のところで女の子には耐えきれなくなりました。ビネイヨは女の子から重いタンクを取って、自分の背負っているタンクの上に積み重ねました。ビネイヨは今では45kg近くもの水を背負って、山を上り続けました。
「(村の人間は)みんな生まれたときから、きつい暮らしを送ることになるのは知っているのよ」と、自分の家の外に腰を下ろして、息子のクマチョを抱きかかえながら、ビネイヨは言いました。クマチョはパンツをはいていませんでした。「(生活がきついのは)私たちが生まれるずっと前から続いている、エチオピアのこの地域の習わしよ」 彼女はこの暮らしに疑問を抱いたことも、何か違ったものを期待したことも一度もありません。
Part 5
長い道のり水を運ぶことに何時間もかけていると、水の一滴一滴の価値がわかってきます。平均的な米国人は毎日、家だけで380Lの水を使っています。アイリト・ビネイヨは10Lで間に合わせています。この貴重な水を山の上まで運んでいるときに、みんなに、洗うために水を使うように説得するのはとてつもなく難しいものです。しかし、衛生設備と衛生管理は大切です。適切な手洗いをするだけで、かなり病気を減らすことができます。ビネイヨは「ひょっとすると1日に1回位」水で手を洗うと言います。「飲み水さえ十分ではないのに、一体どうやって服なんか洗えるのよ?」と、言うのです。ビネイヨが自分の体を洗うことはめったにありません。
例えば、井戸を掘ったりすることで、みんなの家の近くにきれいな水をもたらすことが、悲惨な(悪)循環を断ち切るカギです。きれいな水が豊富に使えるようになっている村は大きく様変わりします。以前は水くみに使っていた時間が、よりたくさんの食べ物を育てることや、より多くの動物を育てることや、商売を始めることにさえ使うことができるのです。家庭では、汚れた水をもう飲まなくなり、そのおかげで、(以前より)病気にかかっている時間が減ったり、病気になった家族の看病に時間がかからなくなります。一番大切なのは、水の奴隷状態からの解放です。この自由のおかげで、女の子たちが学校へ通えるようになり、より良い人生を選べるようになることを意味しています。家族のために水くみをする必要があったり、あるいは、お母さんが出かけている間に弟たち・妹たちの世話をする必要があることが、エチオピアのこの地域の女性のほとんどが学校に通っていない主な理由なのです。
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