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Lesson 5

The World of Miyazawa Kenji is Our World
宮沢賢治の世界は私たちの世界そのものです

Part 1

exactly まさに、正確に
coast 海岸
well いや、というより、えーと
in fact 実は、実際は
It was that part of A that B それ=イギリス海岸はBするAの一部でした
( It は指示代名詞で、 that は先行詞にくっついているもので、「情報予告」の働きをしています。 that は関係代名詞の目的格です――が、ここでは分裂文=強調構文のような訳し方をしました。その方が日本語として、おさまりがいいと判断したからです)
bank 堤防、岸、銀行
prefecture 県
lifetime 生涯、一生
corner 果て、地方
every corner of ~ ~の各地で、~の至る所で
globe 地球
passionate 熱心な、情熱あふれる
thirst のどの渇き
thirst for ~ ~への渇望
transport 運ぶ、輸送する
immerse 浸す、引き込む
immerse oneself in ~ ~に夢中になる・没頭する
literature 文学
poetry 詩、詩歌

wonder 不思議に思う
precisely まさに、正確に
previous 前の、以前の
accept 受け入れる、受ける
prize 賞
happen to ― たまたま―する
pass away 死ぬ、亡くなる
blow 吹く
be convinced 確信している
right ちょうど、まともに、完全に
communicate with ~  ~と意思を伝えあう、~とコミュニケイトする


2008年9月21日午後1時30分、私はイギリス海岸に立っていました。というより、正確にはイギリスにあるイギリス海岸ではありませんでした。実は、海岸ですらありませんでした。宮沢賢治が「イギリス海岸」と呼んだのは、岩手県花巻市の北上川の川岸の1部でした。

賢治は、彼の一生で日本から外に旅をすることは一度もありませんでした(→生涯日本を離れることはありませんでした)が、賢治の想像力は地球上の至る所に賢治を連れて行ってくれたのでした。そして、宇宙の果てまでも…… 人生のほとんどを花巻で過ごしたのですが、研究に情熱を持っていました。想像の中で他の場所まで賢治を運んでくれたのは、他ならぬ賢治の知識への欲求でした。賢治は文学、詩歌、音楽、芸術、言葉の研究に没頭しました。賢治は真の「世界を知っていた男」でした。

どのようにして私がまさにその時刻にその場所にいたとわかるのか、不思議に思われるかもしれませんね。私はそれ以前にも何度か花巻に行っていました。最初は1969年でした。しかし、今回は違っていました。宮沢賢治は1933年9月21日午後1時30分に死にました。私は今回、宮沢賢治賞を受賞するために花巻に行きました。賢治が逝去してちょうど75年にあたりました。

私が1時30分に川岸に立っていると、突然の風が吹き始めました。あの風は私の体をまさに吹き抜けた、と確信しました。空からやってくる風と光と雪は、私たちとコミュニケイトして、別の世界からのメッセージを伝えてくれていると、賢治は信じていました。賢治はそのとき私に何かを伝えようとしていたのでしょうか?


Part 2

recall 思い出す
discover 見つける、発見する
writing 文学作品、著書
way back in ~ ~の昔に
set foot in ~ ~に着く、~足を踏み入れる
fortunately 幸いにも、運よく
rush 急いで行く
recognize 認める、理解する
originality 独創性、斬新さ
style 文体、表現法
fall in love with ~ ~と恋に落ちる、~が大好きになる
delightful 嬉しい、魅力的な、人を愉快にさせる
moving 感動させる

journey 旅行
last 続く
creator 作る人、創作者
comprehend 理解する
cope with ~ ~をうまく処理する
huge 巨大な
confront 対立する、立ちはだかる
in every way あらゆる点で
contemporary 同時代の
for a moment 少しの間、しばらく

practical 実際に役立つ、有用な、実際的な
concept 概念、考え
individual 個人の
right 権利
democracy 民主主義、民主国家
live by ~ ~を生活の指針とする、~に従って生きる
slave 奴隷
free 自由にさせる、解放する
believe in ~ ~を信じる
equality 平等
minority 少数派、少数民族
grand 大きな、主要な、重要な
theme テーマ、主題

human 人類、人間
relate to ~  ~に関係がある
very まさにその(形容詞です)
survival 生存、生き残り
depend on how ~ どのように~するかにかかっている
preserve 保存する、守る
protect 守る
living things 生き物たち
breathe   呼吸する


最初に日本に足を踏み入れた1967年にさかのぼって、私はどのようにして賢治の作品を発見したのか思い出し始めました。友達に「誰が一番美しい日本文学を書くんだい?」と尋ねました。運のいいことに、その友達は「宮沢賢治だよ!」と答えてくれたのです。私は本屋さんに急いで行って、賢治の本のうちの1冊を買いました。当時、日本語はそれほどうまく読めませんでしたが、賢治の文体の美しさと独創性は私にもわかりました。賢治の奇妙で、楽しい、それでいて深く感動させてくれる話が大好きになりました。

その最初の本のおかげで、40年以上も続くことになる研究と発見の旅を始められたのです。

しかし、宮沢賢治は、美しい話と素晴らしい詩を創作したというだけの人物をはるかに超える存在です。賢治は、21世紀に私たちが直面する大きな諸問題をどのように理解でき、どのようにうまく処理することができるのかを教えることのできる作家です。賢治はいかなる点でも、私たちの同時代人なのです。

それでは、しばらくの間、歴史を振り返ってみましょう。

18世紀は、生活の基本となる個人の権利と近代民主主義という実際に役立つ概念をもたらしてくれました。19世紀になると、奴隷は解放され、人々は平等を本当に信じ始めました。20世紀には女性や子供や少数民族の権利が認められました。しかし現代の私たちの世紀の「中心テーマ」は何でしょうか?

私は、私たち人類がどのようにして自然と関係を結ぶのかという問題だと考えています。まさに人類の存亡は今日、どのようにうまく自然を保存し、守るのかにかかっています。ここで私が自然と言っているのは、すべての生きるものだけではなく、私たちの山、(美しい)川も湖も海も、吸い込むまさにこの空気をも意味しています。


Part 3

poet 詩人
religious 宗教の、宗教的な、信心深い
thinker 思索家、思想家
observation 観察
experience 経験
cease ― ing ―するのをやめる
view A as B AをBと見なす・考える
lord 領主、所有者、主人
creation 創造
treat 扱う
humanely 人道的に、慈悲深く
conserve 保存する、保護する
resource 資源
possibility 可能性
continue to ― ―し続ける

vegetarian ベジタリアン、菜食主義者
as an adult 大人になってから
not A or B AもBも~ない
title 題名をつける
agricultural 農業の
hero 主人公、ヒーロー
realize 理解する、実現する
luckily 運よく、幸運にも
introduce 紹介する、導入する
permission 許可
refuse to ―  ―することを拒否する

life 生命、生物、人生、生活
sacred 神聖な
treat A with B  BをもってAを取り扱う
respect 尊敬、尊重
kindness 優しさ、親切
vital 重要な、生命の、元気のよい
crucial きわめて重大な、決定的な、命にかかわる
morality 道徳
goodness 善良さ、美徳
thanks to ~ ~のおかげで
Buddhist 仏教徒、仏陀の、仏教の
teaching 教え、教義、教職
follow 従う
on a ~ plane ~な水準で・にある

see A as B  AをBと見なす・考える
element 要素、構成要素
sense 感じる
be connected to ~ ~に結びついている
far away 遠く離れている
even farther away ずっと遠くに離れている


宮沢賢治は作家・詩人であるだけではありませんでした。賢治は科学者であり、厚い信仰心を持った思索家でもありました。私たち人類は人類を「創造主」であると見なすのをやめなければいけないということと、私たちは動物たちを人道的に扱い、自然の資源を保護しなければいけないということを、観察と経験から知りました。こうした資源がなければ、人類が地球上で生き続けることは不可能です。

賢治はベジタリアンでした。大人になってからは、肉も魚も口にしませんでした。『フランドン農学校の豚』というタイトルの物語では、主人公のブタは、学校の人たちが自分を殺そうとしていることに気づきます。運のいいことに、その国の国王が新しい法律を導入しました。動物は、彼らの許可なく(→動物たちが「殺してもいいよ」と許可しなくては)殺してはいけないのです。主人公のブタは許可するのを拒みます。

賢治が私たちに伝えようとしていることは、すべての命は神聖だ、動物たちも尊敬と優しさを持って扱われるべきだということです。これは私たち人類が21世紀に学ばなければいけない一番重要重大なことの1つだ、と私は信じています。

『雪渡り』と題された賢治の美しい話では、人類に道徳心と善良さについて教えてくれるのは狐たちです。賢治の信じた仏教の教えのおかげで、賢治は人間と同じ水準で動物たちを見ていました。

賢治は自分自身を自然のほんの1つの小さな要素だと考えていました。私たち(=人間だけではなく、生きとし生けるもの、いえ、生きていなくてもそこにあるものはすべて)はみんなお互いにつながっていると感じていました。北上川の水はミシシッピ川の水と同じだし、日本の東北地方の空気は、ずっとはるかかなたの中国、ロシア、その他の国々の空気と同じだと知っていました。


Part 4

tragedy 悲劇
cause 引き起こす、原因になる
added 付け加えられた、付加された
nuclear 核の、原子力の
disaster 災害
No man is an island. 誰も孤島ではない。/人は一人では生きていけない。
be responsible for ~ 人は~に責任がある、モノは~の原因となる
fate 宿命、運命
certainly 確かに
close to one’s heart ~の心のうちに

verge 縁
on the verge of ~ ~の瀬戸際・限界に
lifestyle ライフスタイル、生活様式
value 価値
consider A to be B AがBだと考える
destroy 破壊する
revolution 革命
peaceful 平和な、穏やかな
redefine 再定義する
personal 個人的な

exist 存在する
whole 全体の
motto モットー、座右銘、標語
guide 案内する、導く
learn to ― ―することを学ぶ、学んで―できるようになる
occur to ~  ~に起きる
carry 運ぶ


2011年3月11日の東日本大震災によって生じた悲劇と、それに付随する原発の大惨事は、イギリス人の詩人ジョン・ダンの言葉にある「誰も一人で生きてるわけじゃない」ということを日本と世界中の人に明確にさせました。私たちはお互いの運命に全責任があるのです。これは確かに賢治が心のうちに抱いていた信念です。

ライフスタイルと価値観に対する見方を大きく変える瀬戸際に、私たちは今いるのです。もし自分たちを「主人」だと考え続けるなら、自然環境を破壊することになるでしょう。革命が必要です。「幸せ」とは何を意味するのかを再定義させてくれる平和な革命が必要です。幸せとは使えるお金がいっぱいあることだけではないのです。私たちの個人の幸せでさえ、他のたくさんの人の幸せに依存しているのです。

賢治は「個人の幸せは、世界全体が幸せになるまで存在しえない」と書きました。これが21世紀に向けての人類のモットーになるべきです。

宮沢賢治は、21世紀を通しての困難な旅を案内してくれる日本の作家です。私たち人類がまさに存続できるかどうかは、私たちが自然の中で生きるだけではなく、自然と共に生きることを学べるのかどうかにかかっているのかもしれません。

2008年9月、北上川の川岸に立っているときに、私に起こった出来事と、その日、風に乗って私に届けられていたメッセージを、私は決して忘れはしないでしょう。

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